World Communer

#01 Sebastian Mayer(ドイツ人写真家)

先日、COMMUNE 246のTOBACCO STANDに一人のドイツ人が入ってきた。普段は何をやっているのかと尋ねると、写真を撮っていると言う。どんな写真を撮るのか見せてもらうと、そのサイトには著名人の姿も。ひょっとしてこの人、ただものじゃないのでは?インタビューをさせてもらおうとカメラを取りに一度オフィスへ。再びTOBACCO STANDへ戻ると、そこに彼の姿はなかった。

数日後、TOBACCO STANDを覗いてみると再び彼の姿が。この機会を逃すまいと早速インタビューさせて欲しいと頼み、写真を撮らせてもらった。

【World Communer】はCOMMUNE 246を訪れた世界の人たちにフォーカスを当て、インタビューをする連載記事です。
 
Words and Photography (Portrait of Sebastian Mayer): Jun Kuramoto
Photography: Sebastian Mayer

 

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Sebastian Mayer(セバスチャン・マイヤー)
SM/AEIOUの名でも知られる写真家。1998年からクリエイティブシーンに身を置く。いわゆる”gun-for-hire”である一方で、彼の個人的な作品も多数。時にはプロデューサーやミュージシャンなどとして、垣根を越えてプロジェクトに取り組むことも。
プライベートな時間はサブカルチャーなどの知識を深めることに割く。特に日本の禅宗や侘寂の哲学、シチュエーショナリストインターナショナル(IS)、70年代のアンダーグラウンドコミック、バウハウスとアーキグラム、ノイズミュージック、そしてビートジェネレーションに関する事には何であれ関心を寄せる。ミニシアター系映画と猫が好き。コーヒーにはミルクも砂糖も入れる。
www.sebastianmayer.com

 

 

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聞けば、2006年の東京デザインウィーク期間中にGoethe Institut(ゲーテ・インスティチュート)のエキシビジョンに招かれ初来日を果たしたという。当時はイギリス・リバプールのバンド、Ladytron(レディトロン)でツアーメンバーとしてBASSを弾いており、ヨーロッパ・ツアーの最中、突然東京に来ないかと誘われ、準備もなく東京に来たのが最初だったそう

「元々バンドメンバーとは友達で、彼らがツアーメンバーを探していて、僕も当時はギターを弾いていたこともあって声を掛けてもらったんだけど、ベースが必要だったみたいで、だから一ヶ月間だけ練習してツアーに参加したんだよ。ドイツでプロの写真家としてのキャリアは持っていて、最初はアディダスのキャンペーンとか、そういった商業写真を撮っていたんだけど、どうにも続かなくて、もうロックバンドでもやろうかなって!(笑)それでバンドに参加したんだ。もう8年はベースを弾いていないけどね。バンドをやっていた1年を除いてはずっと写真を続けているよ」。

 

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“全部起こりうることなんだよ。人生って色んな機会が転がっているから”

 

写真を撮る目的は?

「写真を撮るのに目的はないな。フリーランスだし。バンドにいた1年はリバプールに住んで、その後リオデジャネイロへ行ったらやっぱり写真が撮りたくなって、また撮り始めたんだ。そしたら徐々に仕事が決まって、マガジン・カバーとかを撮るようになったんだ。でも、今はFacebookで2000人以上も友達がいるから、多分会った人の顔を忘れないために写真を撮っているのかもね(笑)」

「僕が一番最初にもらった仕事は映画『kids』のLarry Clark(ラリー・クラーク)で、僕も元々大ファンだったんだ。友達がインタビューに行くから一緒に写真を撮ってくれないかと仕事をくれて。それで無事に本も完成して僕の最初の作品に。その後はSPEX MAGAZINEというドイツのメディアに仕事をもらって、例えば、Dinosaur Jr.(ダイナソー・ジュニア)の撮影で次の水曜日は何時に来れる?とか、そういった感じで。そうやって徐々に仕事が増えていったんだ。まあ、全部起こりうることなんだよ。人生って色んな機会が転がっているから。それを一つ一つ摘み取っていっただけなんだよ」

 

今まで撮影した中で印象に残っている人はいますか?

「ん~、Rolling Stones(ローリング・ストーンズ)かな。やっぱりとてつもなくビッグだし、キース・リチャーズは好きだよ。彼らの音楽は僕が好きなタイプではないけどね。僕が撮りたかったアーティストはイギー・ポップとボアダムスの山塚アイなんだ。あとは、、、バラク・オバマとか(笑)」

 

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“僕が大切にしているのは直感的なクリエイティブ・エクスチェンジ”

 

写真を撮る前と後ではその人の印象は変わりますか?

「撮った直後での変化というのはないけど、雑誌でしか見たことがなかった人と5時間も一緒にいたらイメージは変わるよね。一方的に自分で描いて築き上げて来たイメージが実際にその人と会って崩れるという経験はあったよ。ここではその人の名前を挙げることは出来ないけど、ティーンエイジャーの頃から大ファンだった人で、UKのマガジン撮影で会うことが出来たんだけど、15年間築き上げてきたイメージがこの日一瞬にして崩れるほどのクソ野郎だったんだ(笑)。ドイツの有名なミュージシャンでさ。もうその人の音楽は聞けないね。そんなこともあった」

 

Sebastianさんの写真は面白いポーズを撮ってたりして、少々実験的な気もするのですが、何かリクエストしたりはするのですか?

「ほとんどしないよ。イギー・ポップの写真では少しリクエストしたけど、元々写真を始めた頃は僕自身すごくシャイで、有名人を前にして写真を撮る以外のコミュニケーションはほとんど図れなかったんだ。だから上向いてとか右向いてとか、そのぐらいしかしゃべれなかった。だから最初は外に出て、好きなものがあったら言ってもらって一緒に撮るとか、そんなことをしていた。でもそんなことが今となっては大事なことだったと分かったんだ。だって自分の知らない人を撮る時に事前にプランばっかり立ててもしょうがないと思わない?アイデアばかりを積み立てても直接本人と会った時にフィットしないと何も意味がない」

「僕が大切にしているのは直感的なクリエイティブ・エクスチェンジ。それを瞬時に行うことだよ。撮りたい場所があるから外に出てそこに向かうけど、その道すがら撮りたくなる写真もある。でも、それは正真正銘の写真なんだ。プランニングは嫌いだね。日本はいつもプラン、プラン、プラン、プランが先だね。晴れの日の写真が必要なのに、当日は雨でプランが台無し。僕は雨の日の写真だって撮るのに」

 

次のアクションを教えて下さい

「アジアの写真を集めて本にすることかな。韓国、中国、シンガポール、約1ヶ月半で32箇所を周って写真を撮るんだ。今回はRolling Stone Magazineのような親しみやすい写真ではなく、建築の写真を撮るんだ。正直、雑誌の写真は安くてそれだけで生計を立てるのは難しいんだ。400枚、500枚と3時間掛けて撮って、その写真を2、3日掛けて抜粋し雑誌に掲載するけど、その1ページの報酬は8000円ぐらいだったりする。だから今回は建築写真を撮りに行くよ」

 

どんな建築写真を撮りたいですか?

「実は今勉強中なんだ。だから色んなミュージアムやアートギャラリーを周ったりしてる。中国もまだ行ったことがないからすごく楽しみにしているよ」

 

いっそバンドに戻ることは考えないんですか?

「戻ってみたいとは思うよ(笑)! 最近だとドイツのエレクトロニック・ミュージシャンで友達でもあるSchneider TMでプレーしたんだけど」

 

ありがとうございました。今日はこんなところで。

「えっ、もっと子供時代のこととか聞かないの?いろいろ喋りたいんだけど(笑)冗談冗談。ありがとう!」

 

 

今回インタビューに応じてくれたセバスチャン・マイヤーさんはすごく気さくな方で、『全てのことは起こりうること』という言葉が印象的だった。COMMUNE 246奥のシェアオフィス『MIDORI.so 2』Galleryでの展示会も交渉中。アジアの旅帰りにふらっと寄ってくれることを願って。